查看更多>>摘要:広い行動圏を持つカツコウ類は,直接観察による利用地域の特定や個体の行動などの社会性に関わる情報の解明が難しい。そのため,その生態や行動には解明されていない部分が多く残っている。とくに森林に生息するホトトギスCuculus poliocephalusでは,隠蔽性が強く,その行動を観察するのが難しい。そこで森林性のホトトギスを対象として,ラジオテレメトリー法を用いて調査を行い,主に行動圏と社会行動における特徴を明らかにして,その社会性について考察した。雄の行動範囲は平均238±74SDha(範囲138-311 ha,n=5)ど広く,繁殖場所と採食場所の分離は見られなかった。また,雄の2羽では行動圏は,ほとんどの部分で重複し,他の雄の行動圏は一部で重複していた。さらに,行動圏内での争いは少なく,明確ななわばりを持たないのではないかと考えられた。一方,雌の行動範囲は平均188±216SDha(範囲37-436 ha,n=3)と個体差が大きかったが,狭い行動圏を持っていた個体では,執拗な追尾行動の争いも多くみられたことから,なわばりに近い空間分布様式をもつ可能性が考えられた。