查看更多>>摘要:宮城県気仙沼市は,日本国内で有数の水産物の水揚げ 地として知られており,特にカツオ,メカジキおよびサ メの水揚げは日本一を誇る。中でもサメへの思い入れは 強く,サメを地域性,独自性を象徴する魚として捉え, 市を挙げて「サメの水揚げ日本一の街」,「フカヒレ生産 日本一の街」,「サメの街気仙沼」といったPRを全国に 発信している。日本で唯一のサメの博物館である 「シャークミュージアム」はその象徴と言えるかもしれ ない。気仙沼市で水揚げされるサメ類の大半は,ヨシキリザ メ(英名 Blue shark,学名 Prionace glauca)およびネズミザメ(市場名モウカザメ,英名Salmon shark,学 名Lamna ditropis)の2種である。その割合はおおよ そヨシキリザメが55%,ネズミザメが37%,その他の 種が8%程度占めている。2011年3月11日(金)14 時46分18秒に発生した東北地方太平洋沖地震による 東日本大震災は我々に大きな衝撃を与え,特に福島県, 宮城県および岩手県における甚大な被害は忘れることの できない記憶として今でも多くの人の心に刻まれてい る。この大震災は当然,現地水産業にも大きな影響を与 えた。気仙沼市の水産業も壊滅的な被害を受け,震災前 に12,000トン以上あったサメ類の水揚げ量は,震災後 2,000トン程度まで激減した(図1)(宮城県内産地魚市 場水揚概要:https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/sui-shin/mizuage.html, 2022 年3 月 27 日)。2021年現在, サメ類の水揚げ量は9,000トンであり,震災前の8割程 度まで回復しているものの,震災以前の活気を取り戻し ているとは言えず,その消費は伸び悩んでいるのが現状である。水揚げされるサメ類の市場価値は主としてフカヒレに よって決められ,肉,皮および骨の価値はフカヒレの 1/10程度と低い。近年,骨や皮は健康食品への積極的 利用が進んだことで価格が上昇しつつあるが,サメ肉は 練り物の補助素材以外で市場に並ぶことはほとんどな い。その原因はアンモニア臭をはじめとする臭気成分に よる食味,食感の低下によるところが大きい。サメ漁獲 量のほぼ2/3はマグロ延縄漁業での混獲であり,その 他は流し網漁船等により漁獲されるが,操業日数に延縄 漁で15-45日,流し網漁で5-15日程度要するため, 漁獲後から水揚げまでの間に鮮度が低下し,サメ独特の アンモニア臭およ,びトリメチルアミンが発生する。ま た,水揚げしたサメ肉の品質も操業初期と後期のもので 異なりばらつきも大きい。